読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ひながたり。

writing practice as practice flight

ときど 「東大卒プロゲーマー」

読書

はじめに疑問

僕自身は格闘ゲームを滅多にやらないんだけど、それでも対戦動画や、あるいはその界隈を覗いてみたくなることがときたまあって、そのたびにいつも疑問に思っていた。

格闘ゲーム界なんていうのは、新作が出るごとに自分の経験値がリセットされてしまう非情な世界のなのに、なぜこのプレイヤーたちは居続けられるのか? それまでの自分の努力が、いつかは無になってしまう、その恐怖にどうしてみんな耐えられるのかな?」

この疑問に対して、本書から解の一端を見いだせたように思うのでその記録。

 

 

“何に”ではなく、どれだけ“真剣に”取り組むかが大切

1つ目の解として、真剣に取り組んだことであれば、たとえゲームであってもそれが無駄にはなることはなく、他の場面で生きてくるということ。

大切なのは「それにどれだけ真剣に取り組むか」なのだと思う。真剣に取り組めば、それがどんなことであっても、人は学べるのではないだろうか。僕の場合は、たまたまその対象がゲームだった、ということだ。
(中略)
何かに真剣に取り組むと、たとえそれがゲームであっても、いつの間にか、成功するための「型」のようなものが身につく。これが実は、まったく別のことに生かせる「応用力」のタネなのである。自分では気づかなくても、何かを真剣にやっている人は、他の何かで思わぬ成果を上げることがある。意図せずとも、身につけた型が応用力として開花するのだ。 (p. 90-91)

げんに著者はゲームで培った「型」を受験に当てはめることで東大に合格し、さらに大学の研究でも国際学会で賞を取った。アカデミック界隈の事情はそれなりに知っているつもりだけど、学部生のうちから国際学会で賞を取るということは並大抵のことではない。世界チャンピオンになるくらいに真剣にゲームに取り組んできたからこそ、転じて世界で評価される研究を成し遂げられたのでしょう。

 

 

チャンスとしてのリセット、習得の速さという評価軸

2つ目の解としては、経験値のリセットを損失ではなく、チャンスと捉えること。そして3つ目の解としては、実際の勝負においては、当人の研究成果の多寡だけではなく、最短距離で研究成果をつかむ能力もまた競われているということ。

それまでの研究成果が1、2年ごとにリセットされてしまう、楽しくも苦しい世界なのである。となると、「理想のプレイが完成するまで3年」などと悠長なことはいっていられない。強くなるには「研究者」的資質も必要だが、「研究者肌」一辺倒でも勝てない。 (p. 101)

 経験値がいつまでもリセットされないなら、後発組は先駆者にいつまでたっても勝てないことになってしまう。大学の研究なんかはその典型例で、学生はおおかた教授に勝てやしない。なぜならば経験値の蓄積の量が桁違いだから。でもゲームの新作であれば皆一斉に横並びのスタートとなり、それは先んじていた側からすれば理不尽に映るかもしれないけど、そうでない大多数にとってみればまたとないチャンスなわけで。そしてそこでは、いかに早く新作に適応できるかということもまた、勝負の範疇に含まれているのだ。ともあれ、この苦しくもある世界を「楽しい」と捉えられる精神のタフさには感服。

 

もちろん、経験値を積めば積むほど、そういったリセットを忌避していくようになるのが道理だろうし、それは仕方のないことだ。でもひたすらに経験だのみで、新しい知識を仕入れる機会がなかったら、その先に待つのは滅びだけだ。

人間は、年齢を重ね、キャリアを重ねるうちに、自分の成功体験に縛られ、新しい知識を受けつけなくなっていく。それは人間であるかぎり、誰しもが直面することかもしれないが、新しい知識を習得する機会を失えば、そこで成長は止まる。
成長を止めれば、「古い」人間として、その座は意欲にあふれる若者たちに取って替わられ、滅んでいく定めにある。 (p. 211) 

冒頭に立ち返って、なぜ自分が疑問を持ったのか、その胸の内が見透かされているようで痛い。

 

 

未決事項

ところで僕自身もシューティングゲームにはそれなりに真剣には取り組んできたつもりなんだけど、他の何かで思わぬ成果を挙げられているかな? もうしばらく考えてみよう。

 

 

おまけ

飛行機をつくった人たちだって、やれといわれて、あるいは惰性で、飛行機をつくったわけではないだろう。鳥のように大空を飛んでみたくてしかたない。もっと遠くのあの国へ行ってみたい。もっと速く、海のむこうのあの人に会いに行きたい。そんなたくさんの情熱によって、今の飛行機の姿があるはずだ。 (p.113)

飛行機だけが情熱の詰まったもの、というつもりはないけれど、人間の限りない情熱が詰まってできたのが飛行機であることには疑いの余地は無い。情熱についての深い洞察を持つ著者が、飛行機に対しても崇高な情熱の存在を見出してくれたなら、飛行機好きな僕にとってはこれほどまでに嬉しいことはないのです。

 

 

東大卒プロゲーマー (PHP新書)

東大卒プロゲーマー (PHP新書)

 

 

お越しくださりありがとうございます。このブログについて