読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ひながたり。

writing practice as practice flight

森博嗣 「創るセンス 工作の思考」 読んだ

読書 コンピュータ 考えごと

はじめに

この本はたしかに以前読んだことがあって、でも引越のタイミングで手放したんだけど、最近になってまた読み直したくなったので買い直した。一番よく覚えていたのは第2章にある「2つの問題」という見出しの箇所で、2つの工作の機構(それぞれ小学生と中学生が作った)があなたにも想像できますか、という内容だった。問題についてしばらく考えを巡らせたから記憶に残ってたんだろうけど、肝心の答えは結局思い浮かばなかった。当時の僕はまだ創るセンスが足りなかったし、そして今も足りない。

 

森博嗣の三部作(と呼んで良いものかどうか)である「自由論*1」「工作論」「小説論」のうち、本書は「工作論」にあたる第二作目。

 

 

内容

まえがきを読めば結論がわかる親切設計で以下引用。

 

簡単に結論を書いてしまえば、「上手くいかないことが問題」なのではなく、「上手くいかないことが普通」なのだ。「こうすれば上手くいく」と教えたこと、また、それを鵜呑みにしたことこそが問題の根元である。 (p. 11)

 

なぜ上手くいかないのか、そこには "ばらつき" があるからです。工作に限らずあらゆるものに存在していて、「こうすれば上手くいく」というノウハウでは汲み取ることのできないもの。このばらつきを認知できるかどうかで、世界のとらえ方がだいぶ変わってくる。

 

どんな物体であっても、計算どおりにものが出来上がることは奇跡だといって良い。 (p. 47)

 

出来上がってるものなんていくらでも世の中にあるけど、それは「あらゆるばらつきを考慮した設計がなされているからにすぎない」*2。そしてばらつきに対するセンスを養うのに一番良い方法が "躰で覚えること"、本書で論じられている工作なのである。工作の経験なくしては、ばらつきの怖さというのはなかなか腑に落ちてこないもの。そしてこうした工作の経験やセンスはそのまま生きるセンスにつながる、というのが著者の主張。ここに至る具体的な議論の流れは本書をご参照ください。

 

自分の人生が、つまりは毎日の工作と同じだ、と気づくことになるだろう。だから、工作のセンスは、そのまま「生きるセンス」になる。 (p. 131)

 

だけど注意したいのは、プログラミング、本書ではデジタルと表現されているもの、これでは本質的にばらつきの怖さを実感出来ないということ。なぜなら同じ動作を繰り返すことこそがデジタルの利点だから。

 

(中略)だが、絶対に一致するようなことはない。必ず差異が生じる。その差の原因は何か、ということを考えるのが実験の最重要の目的だ。現実のばらつきは常に存在する。どんなに精度を上げても必ず誤差が出る。そういうことを技術者は知らなければならない。(中略)これは、コンピュータを相手にするプログラミングと、実際の工作とで最も違っている点だろう。プログラムで得られる結果には誤差は表れない。計算どおりの動作を繰り返すのがデジタルである。 (p.90)

 

読んでいて少なからず体がふるえる。現実世界の複雑さから逃れるようにプログラミングの世界に飛び込んだはずが、そこで工作のセンスはおろか、生きるセンスさえも失いつつあったのかもしれない。それでも幸いなことに、こちらの世界にもまだばらつきは存在していて、救いはありそうだった。人にやさしいプログラムが書けるようになりたい。

 

ただし、プログラムであっても、それを扱うのは人間だから、人間のための入力や出力がある。やはりそこで誤差が生じる。(中略)まともなものを作るには、完成したものがどう扱われるのか、と想像する必要がある。それも、技術者に求められる能力である。 (p. 90)

 

 

その他

  • 工業と芸術の違い
  • 工作と小説の違い
  • 技術は言葉では片付けられない
  • 工作の神様

このあたり意識してこなかったから僕自身ではこれまで語れなかったけど、少なくとも借り物の言葉だけど本書から見つけられて嬉しかった。とくに3番目は示唆的で、どんなに頑張っても結局のところ技術は属人的にしかならないのかなという(良い意味での)諦観、そしてそれを踏まえたうえで技術伝達はどうすれば良いのかを考える道筋を与えてくれた。工作の神様は本書の最後に述べられてて、人生への態度というか覚悟の素晴らしさ感じた。

 

 

何つくろう

だからとにかくなにか作りましょうということで、本書では技術的に簡単なもので紙工作を挙げてる。僕はゲームに費やしてきた時間が長いせいで、プラモデルはろくに作ったことがなかったし、これまで興味も薄かった。以前に記事*3にした怒首領蜂大往生のプラモデル、勢いで買ってしまったはいいけれど、作れなくて途方に暮れてるという情けない話もある。紙工作というのはとっつきやすいし、専門の工具もいらないし、うまくやり続ければプラモデル作りのスキルアップもなりそうで良い。そういえば今日ゆるゆり3期の第3話見てたら、歳納京子がダンボール使って犬小屋作ってた。あれも紙工作の一種だし、彼女みたいになんでもサクッと作れるのにあこがれる。なんか余談っぽくなってきた。

 

創るセンス 工作の思考 (集英社新書)

創るセンス 工作の思考 (集英社新書)

 

 

お越しくださりありがとうございます。このブログについて