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ひながたり。

writing practice as practice flight

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  • For ASTRO-H with Love and Squalor*1
  • エモめアテンション

 

現代萌衛星図鑑 第2集

現代萌衛星図鑑 第2集

 

 

X線天文衛星のひとみことASTRO-H、普段は衛星の様子に注目することはないんだけど、3月のおわりにトラブルが発生してからはその動向を見守ってた。当初は復旧に努めますと意気込んでいたJAXAも、直近のプレスリリースを見ると運用は断念せざるを得ませんとのことで、とても残念というのが率直な気持ち。この衛星を打ち上げたのはH-IIAロケット30号機で、搭載されているロケットエンジンはLE-7Aだけど、これではエンジンも(文字通り海底から)浮かばれない。

 

 

今後の原因究明その他諸々はさておき、失敗に触れるたびに思い返すのはゲームで出会ったひとつの言葉で、それはGears of Warシリーズのデザインディレクターであるクリフ・ブレジンスキーが語ったものだった*2。こういう機会に引用しようと思って用意してたんじゃなくて、自分自身のためにと心の中にとどめているもの。

Success is going from failure to failure without a loss of enthusiasm.

世の中のなんでもそうだけど、失敗もなしに事が運ぶなんてことはまずないし、ましてや宇宙を相手にした未知の探究・新しい挑戦であればなおさらで、それは失敗の連続になるかもしれない。上手くいくことなんてほとんどまれで、自分ができることの限度を知る諦観、それでもなお諦めることなく地道に一歩ずつ前に進んでいくための熱意、この相矛盾するマインドセットを自分のなかで両立できたことが、大学での長い研究生活で培った最大の収穫だったと、今になっては思う。文脈は少し違うけれども、フランスの哲学者アランがその著書の幸福論でいうところの「あきらめと幾何学的精神」という言葉がしっくりきてすごく好き。「あきらめと幾何学的精神を学ぶこと、これこそ人類の叡智の重要な部分にほかならない」のである。

 

 

あるいは同じ宇宙という領域から拾うならば、僕はプラネテスにあるハチマキの台詞を思い出す。文字起こしだと全然迫力が伝わらないので、是非漫画でご参照ください。

最前線に立つ人間だけが!! 車を作って ヒコーキ作って 宇宙船作って!! そうやって未来を作ってきたんだろ!?

クソッタレな今日を生きていけるのは! 明日に期待するからだろ!? 宇宙船員が命がけで宇宙へ出て 今日の限界を超えてみせるからだろうが!

プラネテスで言うところの車もヒコーキも宇宙船も、失敗を繰り返した果てに今日の姿があるのは厳然たる事実なわけで。あるいは挑戦して失敗できるのが最前線に立つ人間の特権であって、それは同時に今日の限界を超えて・未来を作る義務でもあるのかもしれない。

 

 

とはいえ、宇宙を相手にするのはやっぱり過酷だと言わざるを得ない気持ちも確かにある。地球とは環境が違うから想定外のトラブルも起きるだろうし、故障してもすぐには修理に行けない。さらには万全を期したところで、すごく運が悪いとスペースデブリがひとつ衝突しただけで全部おじゃんにもなりうる(今回の件で当初推測されていたように*3)。環境の厳しさは人間にとっても同じで、プラネテスでも老年の宇宙飛行士が宇宙放射線による白血病に斃れる描写がある。宇宙という言葉が持つ魅力・輝かしさとは裏腹に、その中身は華やかさだけじゃなくて、むしろ大変なことのほうが多いだろうと想像する。それはかつての飛行機がまさにそうで、零戦の設計者である堀越二郎がその著書で語っている通り。少し長いけど引用。

それと同時に、私が尊敬する ”ヘリコプターの父” イゴール・シコルスキーの自叙伝に、「自分の仕事に根深くたずさわった者の生涯は、一般の人の生涯よりもはげしい山と谷の起伏の連続である。」と書かれているように、大きな仕事をなしとげるためには、愉悦よりも労苦と心配のほうがはるかに強く長いものであることを言いたい。そして、そのあいまに訪れる、つかのまの喜びこそ、何ものにもかえがたい生きがいを人に与えてくれるものであることを、この私の拙い小著から汲み取っていただけるなら、著者としてこれに過ぎる喜びはない。

強く長い労苦と心配のなか、つかのまの喜びを得ようと奮闘する研究はきっと尊いものだと思う。関係各位におかれましては、どうか諦めることなく、次の挑戦へと一歩を踏み出して欲しいと願っています。

 

 

参考文献

まずははじめに引用したクリフ・ブレジンスキーの言葉、シリーズ第二作目でのエンディングのスタッフロールで出てくる。Gears of Warシリーズは一面の文脈ですこしだけ語ってた。

 

ギアーズ オブ ウォー 2 (通常版) 【CEROレーティング「Z」】

ギアーズ オブ ウォー 2 (通常版) 【CEROレーティング「Z」】

 

  

hina747.hatenablog.com

 

 

つぎに引用したプラネテスの台詞は第2巻にある。上で書いた理由で是非原作を読んでみて欲しい。かつて記事にもしていたっぽい。

 

プラネテス(2) (モーニング KC)

プラネテス(2) (モーニング KC)

 

 

hina747.hatenablog.com

 

 

最後に堀越二郎零戦、引用箇所はまえがきの終わりにある。こちらもかつて記事にもしていたっぽい。

 

 

hina747.hatenablog.com

 

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