ひながたり。

writing practice as practice flight

WhitePowder 「LAMUNATION!」 遊んだ

(中略)どういう話だったかといわれると、すんなり筋を通して語るのはあまり楽ではない。ただ作中のそこここのきらめきが、記憶にこびりついて、慕わしい思いをそそり立てるのである。(中略)一瞬キラリと光って、それで終り。はかないといえばはかない。しかしそれだけ、きらめきのあえかさが、一際深く、見た眼を通して心にしみわたるということがある。

 

本作の解説だと思いましたか? 残念ながら違っていて、上の文章は鏡花短篇集のあとがきから引用したもの。鏡花の短篇のきらめきが珠玉のそれであるならば、本作のかがやきはラムネ瓶とビー玉に透かして見える、真夏の太陽のそれだろうか。青い空と白い雲のなか、その輝きはどこまでもキラキラとしていて――そんな眩しかった日のこと、そんな夏の日のこと。

 

以下ネタバレ注意です。

 

 

ゲームを始めてすぐ圧倒されたのがそのデザインで、新ブランドらしい尖り具合を見せてくれたのには素直に驚く。それは世界が持つまばゆい青と白(と赤と黄) の配色であるとか、フチ無しのタイトルロゴのスタイリッシュ感、縦横比の際立つサンセリフの英字フォント、ひたすらに疾走するオープニングムービー、ヒロイン初登場シーンでのテロップなどなど。昨今の美少女ゲーム事情に疎いから一般にそうとは言い切れないけど、新感覚という言葉に恥じないつくりになっていると個人的には感じた。あとはBGM、僕は音楽については語れないけど、それでもその世界観を壊すものでは決してなかったことは強調しておきたい。

 

「僕は『オタク特有の青春感』があると思っていて、例えばそれはエロゲーの青空だったりするんです(笑)。(中略)青空とか入道雲って、とにかく正義だと思うんですよ。ノスタルジックで、失ってしまったピュアさとか透明感とか、そういうものを全部含んでいる。」*1かく語られる空と雲の大正義に溢れながらも、けれど感傷の無い・どこまでも突き抜けた世界観は、色々なものをあっという間に通り越して、僕らに爽快感だけを見せてくれる。そこに添えられるラムネは、真夏の象徴であり、青色のモチーフであり、少女に恋する演出装置であり。「ほら、ラムネを飲み干す少女にあなたは恋をしただろう」*2そして本作におけるヒロインでもある。

 

その尖ったデザインをシステムの面から語るならば、メッセージ表示の速さ・オートモードでの待ち時間の短さは、デフォルト設定にして間断ない会話の応酬で僕らを叩きのめし、思考停止へと運んでくれる。その速さはなかば暴力的でありながらも快感で、普段なら試行錯誤するところを、本作はデフォルト設定の速さですんなりと楽しめる妙な親和性があった。加えてタイトル画面には "FULL OPEN (全ての要素開放)" という選択肢が予め用意されていて、刹那主義的に快楽を享受する権利すらもまた遊ぶ側に委ねられている。通常であれば共通ルートをこなしてから個別ルートが云々という具合だけど、本作ではそれさえもすっ飛ばすことができる。いきなりシーン鑑賞してもいいんだよ。

 

「あなたが望むのなら紳士にだってなれるわ」*3もとい、冒頭のシーンで主人公のインカムに飛び込んでくるセンターヒロイン、らむねの名を持ち・世界に祝福された彼女は、皆に愛されるクールなイケメン。瀟洒でケレン味のあるキャラ同士の掛け合いには、一度とならず光るものがあって、とくにらむねと陽菜の距離感・関係性はとても好き。物語後半で出てくる一枚絵のシーンは、本作のなかでもひときわ強いきらめきを放っている。「別に君が嫌いなわけじゃないし、むしろ性別関係なしに大好きだよ、私は」陽菜がピアノを弾き、それをらむねが聴く。空と雲だけのまっさらな世界に二人きり。え? これプロジェクションマッピングなの?

 

その真新しさの一方で、惜しいなと感じた部分も少なくはない。破天荒なストーリーだけれど保守的な部分もあって、その最たるものが二重化・冗長化されたコメディで、これはバックアップのつもりなのかな?「別にここは笑わなくていいです」映画、プロレス、その他諸々に由来するであろうパロディは半分くらいしか判らなくて、置いてけぼりにされた気持ち。ゴールデンアイでモーションセンサー爆弾をトイレに仕掛ける話とか誰が拾えるんだろう…(わたしです*4 )まあ逆に考えれば、よくここまでネタを詰め込んだなと嘆息する。立ち絵はあまり動かない。昨今のリッチな表現、Live2Dとまではいかなくても、会話の最中にキャラの表情がころころ変わるのに慣れてしまった身からすると、少し物足りない。

 

序盤は本当に面白いと感じたし、中盤には世界の秘密が何となく見えてきてわくわくしたけど、終わってみればよく判らないままに全部片付けられてて、個人的にはもやもやの残る読後感だった。部分々々の美しさはあるけれど、部分の数珠繋がりが長くなるにつれて、その自立にはコンテキストを必要とし、そしてそこには自然と説得を求めてしまう。それは勢いだけでどうにかなるものではなくて、この尺で要素の輝きを頼みにするというのは、土台無理があるのかもしれない。あるいは僕らがコンテキストの理解をも放棄したその先に、本作の真の味わいがあるのだろうか。それはまさに唯美主義的な何物か。ともあれ従来のゲームとは一線を画した本作、これもまた価値のある試作ではあると思う。思いたい。

 

 

*1:[PDF販売中] デザインとデザイナーをもっと知るための同人誌「jadda vol.02」 – jadda 染谷洋平氏インタビュー

*2:月刊MdN 2015年 6月号(特集:漫画/アニメ/イラスト/アート 少女の表現史) コラム「少女に思わず恋してしまう『演出装置』」

*3:少女セクト(2) (メガストアコミックス) 第九話の思信の台詞

*4:対戦モードで武器をモーションセンサー爆弾、マップを化学工場にすると遊べる。モーションセンサー爆弾は特殊武器扱いだから、工場内のトイレに出現する。るなちーくんの言う「トイレに爆弾仕掛けるのが超上手い」とは、個室からダクトに登ってリスポーン地点に爆弾を設置し、相手の復活即死亡を狙うものだろうか。個室からダクトに登るには少しコツが必要で、スティックとCボタンを使いながら勢い良く個室に飛び込んでも登れるけれど、個室内の左隅でしゃがみながらR+Cボタン右+スティック左(うろ覚え、Cボタンとスティックの左右逆かも)を入力し続けるほうが簡単。無事にリスポーン地点に爆弾を仕掛けたら、早々に戻ってダクトから降りよう。さもないと起爆時の爆風でダメージを受けるぞ。うっかり自分が死んでしまうと、自分の仕掛けた爆弾で復活即死亡になりかねないので、爆弾を仕掛けたらひたすら死なないようにしよう。もし死んでしまったら、3人以上の対戦であれば、あえて復活せずにリスポーンを引き延ばすのも手。悔しがってるフリでもしながら、もうひとりがやられて復活するのを眈々と待とう。運が良ければ復活と同時に、仕掛けた爆弾を"処理"してくれるだろう――あ、こちらからは以上です

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