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ひながたり。

writing practice as practice flight

佐藤雅昭 「なぜあなたは論文が書けないのか?」 読んだ

読書

タイトルの通りで論文書けなくてきびしいので読んだ。

 

なぜあなたは論文が書けないのか?

なぜあなたは論文が書けないのか?

 

 

さすがに関係者のいる中で本書を読むことは憚られたので、研究室では読んでいないし、またこの本を読んだことも周りの人には話していない。ここに書くことで自分の理解の一助になれば良い。

 

 

プロローグ

プロローグではとても重要な2つの問いが投げかけられていて、まずは自分の中にある根っこの部分を再確認させられる。

 

Q1 何のためにあなたは論文を書くのか、明確な答えがあるか?

Q2 論文を書くことはあなたの人生にとって無駄ではないと言い切れるか?

 

それぞれの問いについては見開き2ページで詳しく解説されていて、その詳細は本書を参照してほしい。そしてこれらの問いを踏まえたうえで、なんで書けないのか・どこがよろしくないのかという三番目の問いが出てくる。

 

Q3 論文作成のどこが律速段階になっているか――論文欠乏症の具体的症状を考えてみたか?

 

この問いに対しては4つの具体的症状が示されていて、これも詳細は本書を参照してほしいんだけど、僕の場合は症状2「論文を書きたい、あるいは書かなければならないとは思っている。しかしどこから手をつけたらいいのかわからず、堂々巡りを繰り返している気がする。」というのが刺さって痛い。そしてプロローグ以降では、ここで挙げた症状ひとつにつき一章を割いて処方箋を示してくれる。僕がまず読んだのは症状2に対応するChapter 2だったけど、実際にはそのほかのチャプターでも有用な問いかけを見つけられてかなり参考になった。

 

 

Chapter 2

症状2に対応するChapter 2、その中でクリティカルだった質問を挙げるならば、

 

Q17 ストーリーは描けているか?

Q19 論文のテーマに関連した文献を30以上集めて目を通したか?

 

前者の問い、ストーリーラインの欠如というのは自分でも易きに流れている自覚はあって、これは前々から記事*1にも書いてたりしたけれど、思考の癖を見透かされているようできびしい。とにかく長いスパンで物事を考えない傾向があるのは良くない。後者の問いは当たり前の話で今更感があるけど、実際に数字を示されると自分はまだ足りてないな…という残念な気持ちになった。文献をあたるのは良いとして、その内容をすぐに忘れてしまうのがまた良くない。でも本書を読んでて、ストーリーをちゃんと持っていればそのストーリー上の文脈で覚えられるから、きっと記憶の助けになるんだろうなという気がしてきたので救いがある。

 

 

Chapter 3/Chapter 4

Chapter 3の幕間には「てるくんの研究論文作成」というのが挟まっていて、これは大学院生が英語で論文を書く場面をモデルケースとして説明しているもの。フィクションなので予定調和感は少なからずあるけど、本書にある問いを追いかけながら論文が出来上がっていく様子を追体験できる。著者の専門柄取り上げられているのはバイオメディカルな内容だけど、論文作成に関わる手順はそれ以外の分野でも応用できる一般性を持ったものになっている。Chapter 4では査読に関する事務的な話題とレビュアーへの対策の話題が半々、なかでも「Q39 Rejectされて心が折れていないか?」という問いとその解説は、リジェクトされた読者の折れた心をもう一度奮い立たせてくれるかもしれない。

 

 

まとめ

ということで全部で40の問いかけとその解説が本書では示される。Chapter 1では論文の作成はsmall stepの積み重ねであると述べられていて、あるいは上では触れなかったけど、Chapter 2では「すべての物事は2度作られる」ことに触れられていて、思想的に近さがあったので読みやすかった。この記事もsmall stepの積み重ね、コマ切れ時間でアウトラインを作って、まとまった時間でアウトラインをスクラップ・アンド・ビルドして完成した。

 

以前に似たような本であるできる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか (KS科学一般書)を読んでいたのを記事*2にしていたけど、本書では問いの形でパターン・アンチパターンを示してくれているので、チェックリストとしてはより使いやすくなっている。あと「できる研究者の~」は洋書の和訳本だったけど、本書は著者が日本人で、その点では英語論文の書き方の部分がより日本人向けの・読者に寄り添うものになっていることを指摘しておきたい。

 

ところで当時は「できる研究者の~」がアマゾンの論文作法・文章技術のカテゴリでベストセラー1位になっていて、できる研究者は(僕も含めて)量産されたはずだった。いまアマゾンで確認したら、本書もやっぱり医療・医学情報学のカテゴリでベストセラー1位になっていて、今度は論文が書ける研究者だらけになる未来が見える。

 

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