ひながたり。

writing practice as practice flight

【ゲーム】トリノライン (minori) 感想とか

TL;DR

突然ですが未来について少しだけ考えてみませんか。昨今流行りの人工知能、そしてアンドロイドが社会に浸透しつつある世界のようすをです。なにも肩肘張って学術書を紐解くことだけが考える手段ではありません、彼女たちの生きざまを見て・そして何かを感じ取ったのなら、それもまた立派な "考えること" でしょう――そんな感じでアンドロイドの女の子と人間の女の子が出てくるminoriのゲーム "トリノライン*1*2" の感想とか書く。以下ネタバレ注意です。

 

 

概観

アンドロイドの普及で世界がどう変わっていくのか、そんなちょっとした思考実験の趣のある作品。舞台はアンドロイド研究が盛んな小さな島、RRC(いま調べたらRobotics Research Centerの略称だよ)という研究機関が活躍してる実験都市で、詳しくは公式サイト*3を参照されたい。アンドロイドとかAIは専門外なので語ることは控えるけれど、読んでいてそこまで突飛な設定があるわけでもなく、多少のご都合主義的な要素は含まれるだろうけど、フィクションのなかにも現実味のある落としどころでそんなに大外しはしていないように思う。途中シロネがやたら人間っぽいなと思ってたら、実は人間の心が入っているアンドロイドという設定だったこと、プログラムそれ自体が果たしてバグを自己認識できるのかという問い、あとは終盤で三原則とか上位命令とかが出てきたあたりから混乱してきたので、論理的に追っていくのをやめたら楽になれた。ひっかかりを感じたのはそのくらい。

 

 

体験:物語

3人ぶんのシナリオを終えてプレイ時間は11時間程度。ちょっと駆け足にならざるを得なかったこと、そして1周終えただけで書いているので、記述に間違いがあればご容赦ください。それでも序盤は相当に物語にのめり込んでいて、オープニングムービーの存在を思わず忘れてしまうくらいには没頭した(ムービーが流れ始めてからようやく、そういえばまだだったなと思い出した)。ムービーはその後3回ほど観直した。

 

遊び終えてから改めて振り返ると3人とも生死が絡んでくるシナリオ、これはよくある感動のお作法ではあるけれど、しかし生死を持たないアンドロイドの存在で加わるひねりがまた面白い。主人公はその存在をトリノに託すことなくこの世を去り、夕梨は一旦は自分の未来をトリノに託すも思い直して生きる決意を新たにし、そして沙羅は人間の不完全性を認めながら生きていく。よしんばこのブランドの軸足の片方が、例えば鑑賞モードや特典まんがにあるような "実用性" にあるとしても、もう片方の軸足は生きる希望や人間性の尊さ――これらはアンドロイドの存在で相対的に浮かび上がるものであり――に在るのだと思う。

 

 

体験:CG/BGM

このブランドの物語進行が注視の連続で構成されているのは以前の記事*4で書いた通り。ふんだんに使用されるCGの美しさには本当に良さがあって、記憶に残っているのは夕暮れの海をシロネと二人で眺める情景、夕暮れの鳥かごで沙羅と二人向かい合う場面、そして夜の星空(ここに人物がいたかどうかが定かではない)。キャラのCGでいえば人物たちの瞳の色収差というのか、虹彩の輪郭が微かに色を持つこの表現がとても好きで、彼女らと向き合う場面では思わず相手の瞳を覗きこみ、そしてそこに込められた相手の感情を知る。メガネを掛けた沙羅と髪を下ろした夕梨は普段とはまた違った印象を与えてくれて、とくに後者の子供っぽい髪留めを外した姿は、思いのほか大人びて見えて気持ちのはやりがある。

 

BGMではとても好きなピアノの曲がひとつ、というかフレーズが一箇所あって(いま調べたらduskという曲の中盤だった)、このフレーズからは夕焼けに染まる世界と夜の静謐な星空を幻視する。これ以外にもいい感じのピアノ曲が結構あったので嬉しい。その一方で本作のティザームービーにあったBGM、すごく気持ちの高まりのあったあの曲が収録されていなかったのは少し残念。でもそのフレーズはいくつかの曲に登場していて、同じフレーズが形を変えて複数の曲に登場する概念*5は個人的に好きなので、それが本作にもあったのは良かった。

 

 

体験:沙羅/主人公

遊び始める前に予想していたこと、それは作品の主題に由来するものではあったけど、本作はアンドロイドとしてのシロネを描く物語であろうということ。けれど遊び終わってから振り返ると、これは沙羅のおはなしでもあるんだよというのを改めて感じる。彼女が幼いころにアンドロイドと接し、そこから研究を志して、道中には挫折と葛藤がありながらも、ふたたび世界を変えるために羽ばたいていく。個人的な思い入れでバイアスがかかっていることを承知しつつ、もちろん主人公が居ないと前に進まなかった話ではあるんだろうけど、でも彼とその妹を差し置いてなお本作は彼女の物語であったように感じている。

 

研究も一筋縄ではいかない。フィクションだから社内政治はともかくとして、人に限りなく近い人ならざるものを作ることの倫理の問題とか哲学的な話、あと人生観・死生観とか、普通はちょっと立ち入りがたいテーマまで踏み込んだ内面の描写があったのは良かった。彼女のその立ち振る舞いや言動や思想が何から何まで格好良くて美しくて、憧れに近いものがあるかもしれない。あれぐらいうまくやれたらどんなに良いだろうか、僕も研究できる美少女になりたい。

 

主人公は語りたい。良く弁が立ち、それゆえに女の子たちの説得にひたすら力を費やしていた印象が強くて、意志の強さと一途さは爽快感は与えても、感情移入は少し難しい。夕梨ルートでの彼は彼女の生を強く望みながらも、シロネルートではあっさりと途中退席してしまい、読み手は傍観者であることを強いられる。絵の美しさと注視の連続による物語進行、ゲームとしての選択肢も最低限しかなく、そのせいかどこか映画的体験に近いものがある。

 

 

おわりに

1周してみて書けるのはこのくらいか。沙羅ルートは少なくとももう1周はしたくて、まだ語れることは多いはず。やっている最中には画面右上に出てくる "つづきから" という選択肢で絶妙な場面から再開できたけど、もう一度はじめから遊んでみるのもありだと思っている。

 

トリノラインというタイトルに込められた思いは最後まで遊ぶと判る仕組みになっていて、それは人類の長年の夢ではあるけれど、人間側にもまたリテラシーが求められるということ。アンドロイドやAIの普及に必要なのは技術的な発展もさることながら、それ以外にも人間の心理的な課題の解決、こちらもまた重要になっていくのだろう。その始点の可能性を描くひとつの物語として、そして人の持つ希望の眩しさと、女の子たちの尊い生きざま、あと実用性とを兼ね備えた本作。あなたの新しい人生を、ぜひここから。

 

  

 

*1:http://www.minori.ph/lineup/trinoline/_index01_.html

*2:

hina747.hatenablog.com

*3:http://www.minori.ph/lineup/trinoline/_about_.html

*4: 

hina747.hatenablog.com

*5:別の例でいえば怒首領蜂シリーズの1面BGMで同じフレーズが使い回されるアレ。ゲームだとわりと良く見かける気がしていて、でもこれをなんて呼べば良いのか知らない

お越しくださりありがとうございます。このブログについて